【どうにかなる日々】について

人生で一二を争うくらいやりたくない面談シートを書き上げる、という作業を終えたらもう朝だったので、なんか寝る気にもなれず、勢いでブログでも更新してやれと思ったので、この間見た映画についてだらだら書こうと思う。

 

『どうにかなる日々』を見た。公開されたばかりの、志村貴子マンガ原作短編アニメ映画。

たまたま公開直前に気付き、原作は見ていなかったけどなんだか見ておきたい気がして、一緒に行ってくれる人がいたので勢いで見に行った。

初見の感想としては「人と一緒に見に行くもんじゃねえや」と思って笑いが止まらなかった。良かったね~というにはちょっと地味だし、山もない。セックスはちらちら出てくるけどそれが生活のなかの一部としてとりわけ劇的でもない。オムニバスとしてほんとうにうっすらとテーマが透けてみえるくらいの透明感は語りづらくて、ほんとうにデートで行くものではないな…と思った。つまらなかったわけではなくて、原作マンガのなかで描かれているだろうカットを、ほんとうにそのままくり抜いてきたような代物だった。おすましのようだ、透明度が高くて何が入っているかは明確なのに、味があり、でも派手ではない感じ。

 

話しはそれるけど、志村貴子の作品だと「ラヴバズ」が一番好きで、その次が「娘の家出」だという自分はかなり変わった読者だと感じている。「ラヴバズ」を貸してみて「うん…うん?」という反応をいままでいくつ見てきたかわからないが、「ヤケになったり無理矢理ポジティブになったりヒスったりどん底まで落ち込んだりしながら、同じところをぐるぐると巡って戻ってきてはいつもそこでがんばろうと思う(けどうまくいかなくて)を繰り返す」という要素がたぶん好きなのだ。「ダメな子が好きだ」と言ったことがあるけど、ダメだから好きなのではなく、翻弄されているけどそこで屈折しているなりに1人をおそれて立ち向かうのが好きなのだろうと思う。

 

だから今回の作品なら好きなのでは?と思いそうなものなのだが、物語としてあまりに普遍的で地に足ついていて変化が少ないもんだから、とりわけ入れ込むこともなく、すーっと流れて終わってしまった。つい劇的なものを求めていってしまったが、そういう意味では全く反対のものだった。おすましじゃなくて、「クセのある具が入っていてそれでいてなお味噌汁」な志村作品が個人的には好きだな、と再確認したのだった。

 

↓ここのレビューがすごくわかりやすく腑に落ちるので、見て「?」となった人は読むといいと思う。

cinemarche.net

 

『志村作品の魅力の根幹をなすものに、傷つきやすい者たちが、他者を征服しない弱さをもって、だれかと懸命につながりあおうとする性格があることは、言を俟たないでしょう』

これな。だから好き。

こういうレビューのように作品の根底を見つめて言語化できる力、すごいし欲しい(強欲なまとめ