外注

バスで映画館まで行く予定だったが、タイミングのいい時間にバスが出ていないので、ついでに溜まっていたYシャツなどをクリーニング屋に持っていった。会員証に書いてある名前のフリガナについて「〇〇〇〇と書いてありますけど〇✕〇〇ですよね?」と言われる。「〇〇〇〇で合ってます」と答える。お店は間違えてすみません、のつもりだったのだったのかもしれないが、無用の気遣いという結果に陥り、みんながちょっとだけ損をした気持ちになった。

そのあと『君たちはどう生きるか』を観に行った。映画館で食べたポップコーンのサワークリームオニオン味は、移り香程度の薄味だった。いつもの博多明太味がいいねと合意形成が行われた。

内容は正直難解でよくわからなかったが、観終わったあとに解説を読んで少しだけ腑に落ちた。このシーンはこういうことだな、の解像度を上げたいが、映画の途中は映像を受け入れるのにいっぱいいっぱいで、メタ的になんなのかを考えるところまでできた試しがない。奥さんと2人それぞれ解説サイトを眺めながらラーメンを食べていたので、無言で啜っていた。ラーメン屋は頼んでた冷奴をなかなか持ってきてくれなかった。

食べ終わってから、友人との映画窓に解釈会しよう、とLINEを投げた。自分で出来ないことは外注するしかないと思った。映画館もポップコーンもクリーニングもラーメンも夜ご飯の焼肉屋もそうだ。たとえちょっと損する気持ちになることがあっても出来ないことをやっていてくれるのはありがたい。映画のなかでも、人の力を借りて生きるのもどう生きるか、だと言っていたような気が今はしている。